落花狼藉 3





全員で 事件に取り組むことになった。

手分けして 聞き込みを始めて わかったことは、あの工場が、非常に怪しいこと。

以前は 漢方薬の工場だったのに、桃源郷の異変が始まった頃に、オーナーが変わり

以前とは違う 化学薬品を調合して作る 薬を作り始めたらしい。

ちなみに 市販はしていない。

新しい工場主の屋敷にも 気味の悪い人たちが出入りしだしたらしい。

働いている作業員も 作っているのは 何の薬だかわからないと言うことだった。

そして その薬は 西のほうへと運ばれているらしいこと。

どこに運ばれているかは 秘密らしく 誰も知らなかった。。

「臭うな。」(三蔵)

「臭いますね。」(八戒)

「ぷんぷん してるんじゃねぇの?」(悟浄)

「なに? おいしい臭いか? くんくん、別に何も臭くないぞ。」(悟空)

「ラッキーな アンラッキーということね。」(





状況証拠は あるが 確証が何も無い。

「工場の事務所に 何か 資料とか証拠とか あるかもしれないから、

今夜にでも 忍び込んで、捜した方がいいかもしれないわ。

探りを入れて日がたつと、警戒が厳しくなる可能性が高いですから・・・・、

吠登城関係がらみなら みんなの出番だけど、そうじゃない時のために、

証拠は押さえておきたいのです。いいかしら?」

まだ 確かなことは無いのだから、の言うことは もっともなことだと、4人は頷く。

「でもきっと 三蔵達の仕事の方でしょうね。」

は ポツリと 残念そうに つぶやいた。

私も 三蔵達も 確信に近いものを感じているが、あえて何も言わない。

の言うこともわかるけど、俺さ あの工場から 妖気を感じたんだ。

妖怪がいるって事は、紅孩児の手下だろ?あの工場をぶっ潰そうぜ!」

悟空は、いきまいて 三蔵を見た。








「この件に関しては、に聞け。まだ 紅孩児の方だとは決まってねぇだろ。」

三蔵は 煙草をくゆらしながら、悟空に言う。

「でもよ〜、三蔵・・・・・・。」バッシ〜ン! 「うるせぇ!!つべこべ言うんじゃねぇ。」

悟空は 不満げに三蔵を見ている。

「悟空、あの工場で 働いているのは、この街の人間の人たちなのね。

工場を潰したら、お仕事なくなっちゃうのよ。

お父さんの仕事がなくなると、お母さんや子供達は どうなると思う?

ご飯が食べられなくなるし、家も無くなるかもしれないわ そんなことにならないように、

できたら また元の普通の薬を作ってもらいたいの。

だから 工場は潰さないで、何とか解決したいのよ。わかってくれるかしら?」

の優しい思いと言葉に、悟空は 子供のように素直に 頷いた。








には かないませんね。悟空が あんなに おとなしく従うんですから。」

八戒は 子供を諭すような その会話に 微笑んだ。

「三ちゃんよりも 説法も上手だったりして・・・・・。」ガゥン、ガゥン・・・・

「何か言ったか?」「何も言ってませんって・・・あっぶねぇなぁ、

三蔵 様ったら 最近 切れるの早くねぇか?」

悟浄は、弾丸を避けた後 ぼそりとつぶやいた。

八戒は それを 横で聞きながら・・・・ 

(無理も無いですよ、お預けされてどの位でしょうかね?三蔵も辛いとこですね。

強引に抱けば 逃げられるでしょうし、待たなきゃならないって ところでしょうか?

思いが強いだけに、自分をもてあましてしまうんでしょう。

 早く 三蔵の心を 癒してあげてくださいね。)と思っていた。










「それで 今夜 私と一緒に 行ってくださる人は どなた?」

今夜の偵察に 自分は当然行くものと決めている、

三蔵は 頭が痛くなる想いだった。

三蔵の手前 他の3人は、立候補したいのを 抑えて 指示を待つ。

「八戒、悟空。2人が に 付いて行け。

今夜は あくまで 偵察なんだ、危険な真似は 絶対するなよ。 いいな?」

三蔵は に向かって 念を押した。

は 黙って頷いた。

悟空と八戒が一緒なら、まずは 大丈夫だろうと 判断したが、帰るまでは落ち着かないだろうと

頭と一緒に 心までも重くなる三蔵だった。










深夜 工場に向かったのは、・悟空・八戒。

事務所入り口の鍵は、八戒の器用さですぐに開き 懐中電灯の明かりで、

事務机の中や書類棚を捜すが、これと言ったものは出てこない。

事務所となりの部屋にあった 金庫が一番怪しそうだと言うので、今度はその鍵と

暗証番号を探す。

「ここに ありましたよ。」八戒が見つけたのは、工場長の机の引き出しの裏。

「へそくりなんかを隠すのに よく使う手なんですよ。」なんでそんなこと知ってるんだ?

そう突っ込みたいのを 抑えて、金庫を開けてみる。

中には 確かに 薬の配合分量の資料らしい物と、制作して送る薬の注文票などが 入っていた。

は とりあえず それを 頂くことにしたが、他には 何も無い。

金庫をに任せて 悟空と八戒は また 事務所の方で 何か探そうと戻った。









は ふと 後ろに 八戒と悟空のものではない 気配を感じた。

妖気に間違いが無い。ここに来てから 初めて感じるものだった。

私達 3人以外には 誰もいないはずなのに、そう思いながら 振り返ったとたん・・・・

ドスッ みぞおちに当身を食らい、意識を失った。

を抱えた その影は、金庫のドアに 紙を挟むと にやりと笑い 

部屋の壁に 出てきた時と同じように 吸い込まれるように 音もなく消えた。









「どうです?悟空。何か 見つかりましたか?

ここへ来て 1時間ほどですね、金庫にあった資料以外は 証拠らしいものはありませんし、

引き上げましょうか? 三蔵が イライラして待っていることですし・・・・・・。」

八戒は 書類棚の引き出しを 押し込めながら、悟空に呼びかけた。

「悟空? どうしました?」悟空は、手を止めて 動かない。

「八戒、の気配が無い。八戒が話しかけるまでは、確かにあった。

それに 一瞬だけど 妖気を感じた。」2人は 顔を見合わせると、金庫のある部屋に 飛び込んだ。

「「!どうした?」」
     (どうかしましたか?)

悟空の言うとおり の姿は 無かった。







金庫の扉に 紙が挟まっているのに 気が付いて 八戒は それを 手に取り読む。


『女を 返して欲しければ、経文を持って 

明日の夜 工場主の屋敷まで来い。

来なければ 女の命は無いものと思え       蜃気 』



悟空が八戒を見ると、紙を持つ八戒の手が、小刻みに震えている。

紙を見る眼差しは、剃刀の刃のように鋭く 光っている。

悟空は 今の八戒ほど 怖い八戒を見たことは無いと 思っていた。





、返事をしてください。・・・・・・・・・?」そう広くも無い部屋。

一目見れば の姿の無いことは、確認できる。それでも 八戒は を呼んでみた。

その問いかけは 月明かりの部屋に 吸い込まれただけだった。








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